
宇宙の謎を追い続けて20万周:ハッブル望遠鏡の新たなる挑戦
人類の宇宙観測の歴史において、また一つ輝かしい金字塔が打ち立てられました。
NASAのハッブル宇宙望遠鏡が、2026年9月19日に地球を周回する軌道をなんと20万回も回るという、途方もないマイルストーンを達成したのです。
1990年の打ち上げから実に36年の歳月が経過し、これまでに移動した距離は約80億キロメートル、実施された観測回数は170万回を優に超えています。
当初の設計寿命を遥かに超えて今なお現役で稼働し続けるその姿は、まさに宇宙探査における生きた伝説と言えるでしょう。
この記念すべき20万周目の軌道上でハッブル望遠鏡が見つめていたのは、宇宙の最も深遠な謎に迫る極めて重要なミッションでした。
それは「重力レンズ効果」を利用した、「アテナ(Athena)」と呼ばれる超新星の再出現を待ち受ける観測です。
遠く離れた超新星爆発の光が、手前にある巨大な銀河団「MACS J0417」の強大な重力によって曲げられ、複数の経路を通って地球に届く現象を重力レンズと呼びます。
光が通る経路の長さがそれぞれ異なるため、同じ超新星爆発の光が時間をずらして何度も「再出現」して見えるという、宇宙の壮大なイリュージョンなのです。
天文学者たちは、この光の到達時間のズレを極めて正確に測定することを目指しています。
なぜなら、その時間差を計算することで、現在の宇宙物理学における最大の難問の一つである「宇宙の膨張率」を導き出すための決定的なピースが得られるからです。
地球の周りを20万回も回りながら、はるか彼方の光の幻影を捉えようとするハッブル望遠鏡の眼差しは、老いてなお鋭く、私たちに宇宙の真理を語りかけてくれています。