
極限の残骸円盤が明かす惑星誕生期の激しい衝突
かつて地球に火星サイズの天体「テイア」が衝突し、その破片から月が誕生したように、惑星の形成期には激しい天体衝突がつきものです。
そしてNASAのジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)を用いた最新の研究により、若い恒星を取り巻く「極限の残骸円盤(Extreme Debris Disks)」の詳細が明らかになり、太陽系初期の激動の歴史を解き明かす重要な手がかりが得られました。
恒星が誕生した直後のガスに満ちた円盤はやがて薄れ、岩石やダストが漂う「残骸円盤」へと移行します。
その中でも、岩石惑星が作られる領域に異常に大量の高温ダストが存在するものは「極限の残骸円盤」と呼ばれています。
こうした円盤は理論上多く存在するはずと考えられていましたが、観測例は若い恒星のわずか約1%と非常に稀です。
今回、研究チームはウェッブ宇宙望遠鏡とスピッツァー宇宙望遠鏡のデータを統合し、これまでで最多となる21個の円盤サンプルを分析することに成功しました。
ダスト成分の違いから判明した衝突エネルギーの規模
ウェッブの中赤外線観測により、ダストの鉱物組成から円盤が「シリカに富む円盤」と「シリカが乏しい円盤」の2種類に明確に分類できることが判明しました。
全体の約3分の1を占める「シリカに富む円盤」は、火星サイズの巨大天体同士が高速衝突して岩石が蒸発するほどの超高エネルギー衝突によって生じ、形成から約3億年未満の若い星にのみ見られます。
一方、残りの「シリカに乏しい円盤」は、月サイズの天体同士のかすり傷のような低エネルギー衝突に由来し、より幅広い年代の恒星に存在することが分かりました。
地球や月の起源と太陽系の激動史をつなぐ新たな手がかり

この観測結果は、私たちの地球や月がたどった進化の道筋と驚くほど一致しています。地球と月が誕生したのは太陽誕生から約1億年後と推定されており、高エネルギー衝突によって形成されるシリカ豊富な円盤の年齢とぴったり重なります。
また、古い星の周りで見られるシリカに乏しい円盤の不規則な明るさの変化は、巨大ガス惑星の軌道移動によって引き起こされた「後期重爆撃期」のような軌道不安定期を反映している可能性があり、ウェッブ望遠鏡が捉えた他星系の激動の姿は、私たちの太陽系がどのようにして生命を育む穏やかな姿へと落ち着いたのかを解明する強力な鍵となります。