ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が史上最古7億3000万年後の超新星を捉えた
宇宙誕生から7億3000万年後に起きた超新星
NASAのジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)は、これまでで最も古い時代に起きた超新星の観測に成功しました。その超新星は、宇宙誕生からわずか 7億3000万年後 に爆発したもので、これは同種の観測として史上最速、最遠の記録更新となります。
さらにウェッブは、その超新星が属する非常に暗い母銀河までも特定しました。これほど初期宇宙の現象を、単なる光の点ではなく「爆発した恒星として直接確認できた」のは初めてのことです。
きっかけはガンマ線バーストの発見

画像 NASA
今回の観測の出発点となったのは、2025年3月中旬に検出された「ガンマ線バースト(GRB)」でした。GRBとは、宇宙で起きる最も激しい爆発現象のひとつで、数秒から数分という短時間に非常に強いガンマ線が放射されます。
3月14日、フランスと中国が共同で開発した宇宙望遠鏡 SVOM が、非常に遠方から届いたガンマ線バーストを検出しました。
その後の観測は、まさに国際連携のリレーでした。
- 約1時間半後
NASAの ニール・ゲーレルズ・スウィフト天文台 がX線源の正確な位置を特定。 - 約11時間後
スペイン・カナリア諸島にある 北欧光学望遠鏡 が、赤外線で残光(アフターグロウ)を検出。
これにより、対象が非常に遠方にある可能性が強まりました。 - 約4時間後
チリにある ヨーロッパ南天天文台(ESO)の超大型望遠鏡(VLT) が解析を行い、爆発はビッグバンから7億3000万年後に起きたと推定しました。
ウェッブによる決定的観測
そして 7月1日、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が迅速観測を実施しました。
通常、ガンマ線バーストは数秒〜数分で終わりますが、それに伴って起きる超新星爆発は数週間かけて明るくなり、その後ゆっくりと暗くなります。
しかし今回の超新星は、数か月にわたって明るくなり続けるという特徴を示しました。
これは、宇宙が膨張していることにより、光と同時に「時間」も引き伸ばされているためです。非常に昔の出来事ほど、私たちから見ると時間の進行がゆっくりに見えるのです。
この効果を見越して、研究チームはガンマ線バースト終了から約3か月半後という最適なタイミングでウェッブを使い、超新星の観測を行いました。
記録更新、そして大きな驚き
今回ウェッブが捉えた超新星は、**これまでの最古記録(宇宙誕生から18億年後)**を大きく塗り替えました。
研究を率いたラドバウド大学(オランダ)およびウォーリック大学(英国)の アンドリュー・レバン教授は、次のように語っています。
「この光が超新星であることを直接示せたのは、ウェッブだけです。
宇宙年齢が現在の5%しかなかった時代に、個々の恒星を観測できることを示しました。」
研究チームにとって最大の驚きは、この最古の超新星が、現代の近傍宇宙で見られる超新星と非常によく似ていたことでした。

画像 NASA
初期宇宙の星は「もっと違う」はずだった
宇宙誕生から最初の10億年は、まだ謎が多く残る時代です。この頃の恒星は、
- 重元素が少ない
- 非常に質量が大きい
- 寿命が短い
と考えられています。また、宇宙は「再電離の時代」にあり、銀河間のガスは高エネルギー光を通しにくい状態でした。
そのため研究者たちは、「初期宇宙の超新星は、現代のものとは大きく違う姿をしているのではないか」と予想していました。
しかし、結果は予想外でした。
「先入観なしで観測した結果、ウェッブは『現代の超新星とほとんど同じ』姿を示したのです」
― 英国レスター大学 ナイル・タンヴィア教授
微妙な違いを見つけるには、今後さらに多くのデータが必要とされています。
かろうじて見えた母銀河
ウェッブは、この超新星が属する母銀河も捉えました。
ただし、その銀河は数ピクセルに満たない、赤くぼんやりとした存在です。
フランスの天体物理学者 エメリック・ル・フロック氏は次のように述べています。
「詳細はまだ分かりませんが、同時代の他の銀河と似た性質を持っているようです。
そもそも、これほど遠い銀河を『見えた』こと自体が画期的です。」
今後の狙い:ガンマ線バーストを“道しるべ”に
研究チームはすでに、初期宇宙で起きるガンマ線バーストを再びウェッブで観測する計画を承認されています。
次の目標は、ガンマ線バーストの残光そのものを利用して、遠方銀河の性質を詳しく調べることです。
「残光は、銀河の特徴を示す“指紋”のような情報を与えてくれます」
― アンドリュー・レバン教授
世界最高峰の宇宙望遠鏡として
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、太陽系から系外惑星、そして宇宙の最初期までを観測する、世界最高性能の宇宙天文台です。
NASAを中心に、ESA(ヨーロッパ宇宙機関)、CSA(カナダ宇宙庁)との国際協力で運用されています。
今回の発見は、「宇宙が始まって間もない時代に、どのような星が生まれ、どのように死んでいったのか」という根本的な疑問に、新たな光を当てる一歩となりました。
今後、ウェッブがさらに古い宇宙の記録を塗り替える可能性も、十分に残されています。
