NASAのパーカー・ソーラー・プローブが描いた「太陽大気の外縁」最新マップ
— 太陽風が生まれる境界、その姿が初めて明らかに —
NASAは2025年12月12日、パーカー・ソーラー・プローブの観測結果により、太陽大気の外縁にある重要な境界の連続した2次元マップを、史上初めて作成したと発表しました。この研究成果は、天文学の専門誌「アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ」に掲載されています。
太陽大気の“境界”とは何か

この境界は**アルヴェン面(Alfvén surface)**と呼ばれています。
太陽の周囲には「コロナ」と呼ばれる高温の外層大気が広がっていますが、アルヴェン面はその外縁に位置し、
- 太陽の磁力の影響が支配的な領域
- 太陽物質が磁力から解放され、宇宙空間へ流れ出す領域
を分ける境目です。
この境界を越えた粒子は二度と太陽へ戻ることはなく、太陽風として太陽系全体に吹き出します。太陽風は時速およそ100万マイルにも達し、惑星や人工衛星、宇宙飛行士、通信システムにまで影響を与えます。
パーカー・ソーラー・プローブだから見えた世界
これまでにもNASAや欧州宇宙機関(ESA)の観測衛星を使い、太陽大気と太陽風の境界を間接的に調べる試みは行われてきました。
しかし、パーカー・ソーラー・プローブは史上最も太陽に近づく探査機であり、アルヴェン面を実際に何度も通過できるという特徴があります。
この極めて近距離での観測により、
- 境界を直接横断するデータ取得
- 観測結果の実測による裏付け
- 太陽活動に応じた境界の変化の追跡
が可能になりました。
太陽活動周期とともに変わる境界の姿

今回の研究では、探査機に搭載されたSWEAP(太陽風電子・アルファ粒子・陽子)機器のデータを使用し、約11年周期で変動する太陽活動との関係を分析しています。
その結果、
- 太陽活動が活発になるにつれ
- 境界はより大きくなり
- 表面は粗くなり
- 尖った構造が増える
ことが分かりました。
アルヴェン面は均一な球状ではなく、泡のようにうねり、場所によって鋭く突き出す不規則な形状をしているのです。
なぜこの発見が重要なのか
アルヴェン面の正確な位置と形状を把握できるようになったことで、科学者は次のような課題に近づくことができます。
- コロナがなぜこれほど高温になるのか
- 太陽風がどのように加速されるのか
- 太陽活動が地球の通信、電力網、GPS、宇宙飛行士の安全にどのような影響を与えるのか
特に宇宙天気の理解が進むことで、太陽フレアや磁気嵐による被害を事前に予測し、対策を取る精度の向上が期待されています。
他の探査機との連携
本研究では、パーカー・ソーラー・プローブのデータに加え、
- ソーラー・オービター(NASA/ESA)
- Windミッション(NASA)
といった他の太陽観測衛星の情報も活用されました。複数の視点を組み合わせることで、太陽大気と太陽風の境界をより立体的に理解できるようになっています。
まとめ
今回の成果は、
- 太陽風が生まれる瞬間の「現場」を初めて連続的に地図化
- 太陽活動周期に応じた境界の変化を実証
- 太陽と地球をつなぐ関係性の理解を一段階進めた
という点で、太陽物理学における大きな前進です。
人類の技術と生活が宇宙環境の影響を強く受けるようになった今、太陽を正しく知ることは、私たち自身を守ることにもつながっています。
パーカー・ソーラー・プローブの研究は、これからも太陽の謎を一つずつ明らかにしていくでしょう。
