
衝突現場へのランデブーまであと2か月!ESAの惑星防衛探査機「ヘラ」が11月到着へカウントダウン
地球を小惑星の破滅的な衝突から守る人類の「惑星防衛(プラネタリー・ディフェンス)」が、極めて重要な最終検証の局面を迎えようとしています。
オランダのハーグで開催中の「ユーロプラネット科学会議(EPSC 2026)」において、欧州宇宙機関(ESA)のプロジェクトチームは、探査機「ヘラ(Hera)」が二重小惑星ディディモスとその衛星ディモルフォスへ到達するランデブー運用について最新の進捗状況を正式発表しました。
2024年10月の打ち上げから順調に深宇宙航海を続けてきたヘラは、2026年11月の目標天体到着まで残りおよそ2か月となり、現場検証に向けた最終カウントダウンに入りました。
このミッションの最大の目的は、2022年9月にNASAの探査機「DART」が時速約2万2500キロメートルでディモルフォスへ激突した歴史的実験の「科学的実地検証」です。
地上からの望遠鏡観測により、衝突によって衛星の公転周期が約33分短縮されたことは確認されましたが、衝突クレーターの正確な深さや大きさ、衝突によって小惑星全体の形状がどのように再編成されたのかといった内部物理データは未だ謎のままです。
ヘラはディモルフォスへ超至近距離まで接近し、超高解像度カメラやレーザー高度計(LiDAR)を駆使して衝突クレーターをミリ単位の精度で3次元マッピングします。
衝突によって飛び散った岩石破片の質量や運動量伝達効率を正確に算出することで、人類が将来、地球衝突コースにある小惑星を本気で軌道変更させるための決定的な実証データを世界で初めて手に入れることになります。
2機の超小型探査機が暴く内部構造と2029年アポフィス接近へ向けた新計画「RAMSES」
ヘラ探査機の技術的ハイライトのひとつが、母船から切り離されて小惑星の超低重力環境に挑む2機の靴箱サイズの超小型探査機(キューブサット)「ユベンタス(Juventas)」と「ミラニ(Milani)」の連携運用です。
ユベンタスは、小惑星探査史上初となる低周波レーダーを照射してディモルフォスの内部構造を透過スキャンし、岩石がスカスカに集まった瓦礫の塊(ラブルパイル構造)であるのかどうかを解明します。
さらに最終段階ではディモルフォス表面へ直接軟着陸を試み、着陸時のバウンドから表面レゴリスの機械的強度を直接測定します。
一方のミラニは、多波長ハイパースペクトルカメラで鉱物組成や塵の微細環境を克明に記録します。
さらにEPSC 2026の会見では、ヘラで確立された探査技術をさらに発展させる次世代の惑星防衛ミッション「RAMSES(ラムセス)」の最新計画も大きく発表されました。
RAMSESは、2029年4月13日に静止衛星の内側である地球からわずか3万2000キロメートルの距離をかすめ飛ぶ危険小惑星「アポフィス(Apophis)」へ向けてランデブーを果たすESA主導の緊急探査計画です。
地球の潮汐力によって小惑星が変形し地滑りを起こす瞬間をその場でリアルタイム観測することで、宇宙災害を未然に防ぐ国際的な防衛網を完成させようとしています。
人類の知恵を結集した宇宙探査が、地球の未来を確実に守る技術へと昇華しつつあります。