ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡、組み立て完了へ / Nancy Grace Roman Space Telescope
― NASA次世代宇宙観測の「新しい目」がいよいよ発進準備段階に ―
NASAは、次世代の主力宇宙望遠鏡となる**ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡(Nancy Grace Roman Space Telescope)**の本体組み立てが完了したことを発表しました。2024年11月25日、米メリーランド州グリーンベルトにあるNASAゴダード宇宙飛行センター最大のクリーンルームで、望遠鏡の内側と外側の主要構造が正式に結合されました。これにより、ローマン望遠鏡は統合段階を終え、最終試験フェーズへと進みます。
組み立て完了が意味するもの
NASAのアミット・クシャトリヤ副長官(技術担当)は、今回の節目について次のように語っています。
「ローマン観測装置の完成は、NASAにとって決定的な瞬間です。革新的な科学は、緻密で規律あるエンジニアリングの上に成り立ちます。このチームは試験を一つずつ積み重ね、最終的に宇宙理解を大きく広げる観測装置を完成させました」
今後、ローマン望遠鏡は最終的な環境試験と性能確認を経て、2026年夏にフロリダ州のケネディ宇宙センターへ移送され、打ち上げ準備に入る予定です。正式な打ち上げ期限は2027年5月までとされていますが、現在の進捗では2026年秋の早期打ち上げも視野に入っています。
打ち上げと観測拠点
ローマン望遠鏡は、SpaceXのファルコン・ヘビーロケットで打ち上げられ、地球から約160万km離れた観測拠点へ投入されます。これは、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡と同じく、安定した深宇宙観測に適した位置です。
NASAゴダード宇宙飛行センターのローマン主任プロジェクト科学者、ジュリー・マケナリー氏は次のように期待を語っています。
「最初の5年間で、10万個以上の太陽系外惑星、数億の恒星、そして数十億の銀河を明らかにする見込みです。打ち上げ後、極めて短期間で宇宙に関する新情報が一気に得られるでしょう」
赤外線で見る広大な宇宙

ローマン望遠鏡は宇宙空間から観測することで、人間の目では見えない赤外線に高い感度を持ちます。さらに、非常に広い視野と高解像度を兼ね備えており、次のような幅広いテーマを同時に研究できます。
- ダークマターとダークエネルギー
- 太陽系外惑星
- 孤立したブラックホール
- 銀河や銀河団の形成と進化
これらの研究は、従来の望遠鏡では数百年分の観測に相当する規模だとされています。
NASA本部 科学ミッション局副長官のニッキー・フォックス氏は、宇宙膨張の謎に触れながら次のように述べています。
「なぜ宇宙の膨張が加速しているのか。空間と時間の本質に関わる、この大きな謎を解き明かすためにローマン望遠鏡は作られました」
2つの主要観測装置
ローマン望遠鏡には、性格の異なる2つの観測装置が搭載されています。
コロナグラフ装置
コロナグラフは、恒星のまぶしい光を遮り、その周囲を回る暗い惑星の光を直接捉える技術実証装置です。これにより、
- 近傍恒星の周囲を回る惑星
- 低温で年老いた巨大惑星
- 塵の円盤
などを可視光で撮影できるようになります。
NASA JPLのフェン・ジャオ氏は次のように話します。
「“私たちは一人なのか”という問いに答えるための道具作りは容易ではありません。ローマンのコロナグラフは、その答えに一歩近づく存在です」
広視野観測装置(Wide Field Instrument)

広視野観測装置は2億8,800万画素の巨大カメラを搭載しています。1枚の画像で、満月よりも広い空を撮影可能です。
- ハッブル宇宙望遠鏡の数百倍のデータ収集速度
- 5年間で約20ペタバイトの観測データを取得
NASA本部のドミニク・ベンフォード氏は「想像を超える規模のデータが、数多くの研究を可能にする」と述べています。
3つの中核サーベイ計画
主ミッションの観測時間の**75%**は、以下の3つの大規模調査に割り当てられます。
高緯度広域サーベイ
10億個以上の銀河を観測し、ダークマターの分布や銀河進化を解明します。
高緯度時間領域サーベイ
同じ領域を繰り返し観測し、天体の変化を「動画」として捉えます。ダークエネルギー研究の重要な手がかりになります。
銀河バルジ時間領域サーベイ
天の川銀河中心部を詳細に観測し、重力マイクロレンズ現象を使って、
- ハビタブルゾーンの惑星
- 浮遊惑星
- 孤立ブラックホール
を発見します。
すべてのデータを公開へ
ローマン望遠鏡のデータは、NASAの「ゴールドスタンダードサイエンス」の方針に基づき、独占期間なしで全面公開されます。世界中の研究者が同時に利用できることで、研究の加速が期待されています。
ナンシー・グレース・ローマンの遺産

望遠鏡の名前の由来であるナンシー・グレース・ローマン博士は、NASA初の女性主任天文学者であり、「宇宙望遠鏡の母」とも呼ばれる存在です。
ゴダード宇宙飛行センターの副プロジェクトマネージャー、ジャッキー・タウンゼント氏は次のように語っています。
「このミッションは、今後何十年にもわたって科学的発見を生み出し続けるでしょう。ローマン博士の“誰もが宇宙を見られる世界”という理念を受け継いでいます」
おわりに
ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡は、宇宙の構造、成り立ち、そして生命の可能性に迫るための重要な存在です。組み立て完了は、その壮大な挑戦への大きな一歩と言えるでしょう。
打ち上げが近づくにつれ、私たちがまだ知らない宇宙の姿が、次々と明らかになっていくはずです。
