パーサヴィアランス今後数年で長距離走行 / 火星を5年近く走り続けるパーサヴィアランス探査車

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パーサヴィアランス今後数年で長距離走行 / 火星を5年近く走り続けるパーサヴィアランス探査車

次なる探査地「ラック・デ・シャルム」へ向かう最新の成果と発見

NASAの火星探査車「パーサヴィアランス」は、火星到着から約5年を迎えようとしています。これまでに走破した距離は約25マイル(約40キロメートル)。現在は、「ラック・デ・シャルム(Lac de Charmes)」と呼ばれる新たな地域へ向かう途中で、来年にかけて岩石試料を収集する計画が進められています。その道中でも、探査機の耐久性試験と重要な科学的発見が続いています。


長期探査を前提に設計された探査車

パーサヴィアランスは、2012年から別の場所を探査している「キュリオシティ」と同様、長期間のミッションを想定して設計されました。機体の製造と運用を担うのは、米カリフォルニア州南部にあるNASAジェット推進研究所(JPL)です。

JPLでは、火星で稼働を続ける探査車と同型の部品を地上で継続的に試験し、長期使用に耐えられるかを確認しています。昨年の夏には、車輪を回転させるための回転アクチュエーターが、今後少なくとも約37マイル(約60キロメートル)分の走行に耐えられることが正式に確認されました。現在は、ブレーキ機構についても同様の試験が進められています。

過去2年間にわたる詳細な評価の結果、ほぼすべてのサブシステムが少なくとも2031年までは正常に稼働できると判断されています。

JPLの副プロジェクトマネージャーであるスティーブ・リー氏は、米国最大級の惑星科学者の会合「アメリカ地球物理学連合(AGU)年次大会」で次のように語っています。
「これらの試験は、探査車が非常に良好な状態にあることを示しています。すべてのシステムが、この火星の魅力的な地域を長期間にわたって詳しく探査する能力を十分に備えています」


ジェゼロ・クレーターでの試料収集と生命の痕跡

パーサヴィアランスは、かつて湖と河川が存在したと考えられている「ジェゼロ・クレーター」を走行し、科学的に価値の高い岩石コア試料を採取してきました。2024年9月には、「シェヤヴァ・フォールズ(Cheyava Falls)」と名付けられた岩石の試料に、過去の微生物生命を示唆する可能性のある痕跡が含まれていると発表され、大きな注目を集めました。


自律走行能力の進化で探査効率が向上

パーサヴィアランスには、6つの科学観測機器に加え、これまでの探査車よりも高度な自律走行能力が搭載されています。最近、学術誌「IEEE Transactions on Field Robotics」に掲載された論文では、「強化自律ナビゲーション(ENav)」と呼ばれる新しい自動計画ツールが紹介されました。

ENavは最大約15メートル先までの地形を認識し、障害物を避けるルートを自動で選択します。そして、そのルートに沿って車輪をどのように制御するかを探査車自身が判断します。

地上のエンジニアは毎日、探査車の行動計画を綿密に立てていますが、実際に走行を始めると、火星表面では予期せぬ障害に遭遇することもあります。従来の探査車も一定の対応はできましたが、障害物が密集している場合や、遠くを見越した判断は苦手でした。その結果、砂地や岩場に近づく際は速度を落とさざるを得ませんでした。

ENavでは、各車輪ごとに地形の起伏を評価し、複数のルートの利点と欠点、人が指定した立ち入り可能・禁止区域などを総合的に判断します。

JPLの自律走行研究者であり論文の筆頭著者でもある小野裕朗氏は次のように述べています。
「パーサヴィアランスの走行の90%以上は自律運転によって行われています。これにより、多様な試料を短時間で収集することが可能になりました。将来、人類が月や火星に向かう際にも、長距離の自律走行は重要な技術になるでしょう」


新たな科学的成果:マージン・ユニットの調査

同日に科学誌「Science」に掲載された論文では、「マージン・ユニット」と呼ばれる、ジェゼロ・クレーターの内縁部にあたる地質地域での新たな発見が報告されています。パーサヴィアランスはこの地域から3つの岩石試料を採取しました。

研究者たちは、これらの試料が、火星内部の深部で形成された岩石が、水や大気とどのように相互作用したかを示す、極めて重要な手がかりになると考えています。これは、生命が存在可能な環境がどのように生まれたかを理解する助けになります。

2023年9月から2024年11月にかけて、探査車はマージン・ユニットを約400メートル登りながら調査を実施しました。特に注目されたのが「かんらん石(オリビン)」を含む岩石です。

鉱物は、結晶が形成された時の環境や年代を記録するため、自然の「時計」として利用されます。ジェゼロ・クレーター周辺には、高温環境で形成されるオリビンが豊富に存在しており、これは火星内部で何が起きていたのかを知る手がかりになります。


水と大気が岩石に刻んだ記録

研究チームは、マージン・ユニットのオリビンが「貫入岩」として形成されたと考えています。これは、マグマが地下の地層に押し入り、冷えて固まった岩石です。その後、侵食によって地表に露出し、古代の湖の水や、当時の火星大気に豊富に存在していた二酸化炭素と反応しました。

その結果、「炭酸塩鉱物」が形成されました。炭酸塩は、過去の生命の痕跡を保存しやすく、同時に火星の大気がどのように変化してきたかを示す重要な情報源でもあります。

論文の筆頭著者であり、パーサヴィアランスの科学チームの一員であるケン・ウィリフォード氏は次のように説明しています。
「オリビンと炭酸塩の組み合わせは、ジェゼロ・クレーターを着陸地点に選んだ大きな理由でした。これらの鉱物は、惑星の進化と生命の可能性を記録する非常に重要な証人なのです」

マージン・ユニットの下部では、オリビンが水による変質を受けた痕跡が多く見られましたが、高所に進むにつれて、マグマだまりでの結晶化を示す構造が目立つようになり、水の影響は少なくなっていきました。


次なる探査地へ

パーサヴィアランスがマージン・ユニットを離れ、「ラック・デ・シャルム」へ向かうことで、新たにオリビンを多く含む岩石試料を採取し、両地域の違いを比較する機会が生まれます。これにより、火星の地質史と生命の可能性について、さらに深い理解が進むことが期待されています。


パーサヴィアランス・ミッションについて

パーサヴィアランス探査車は、カリフォルニア工科大学がNASAの代理として管理するジェット推進研究所によって製造され、NASAの火星探査プログラムの一環として運用されています。

最新情報はNASA公式サイトで確認できます。
https://science.nasa.gov/mission/mars-2020-perseverance


長年にわたり走り続けながら、今なお新たな発見をもたらすパーサヴィアランス。その探索は、火星に生命が存在した可能性という、人類にとって大きな問いへの答えに少しずつ近づいています。

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