[ドローンテスト]火星探査の未来を地球の砂漠で試す

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NASAがデスバレーとモハーベ砂漠で行った最新フィールドテスト

NASAが火星探査の新しい技術を開発する際、いきなり宇宙で試すことはできません。そこでエンジニアや研究者たちは、地球上で火星にできるだけ近い環境を探し出し、試験と改良を何度も繰り返します。

2025年初頭、NASAジェット推進研究所(JPL/カリフォルニア州南部)のチームは、そのためにカリフォルニア州のデスバレー国立公園とモハーベ砂漠へ向かいました。目的は、将来の火星探査用ドローンの航法技術を改良するためです。


目次

火星に似た「何もない砂丘」を求めて

このテストに使われたのは、3機の研究用ドローンです。研究プロジェクトの名称は
Extended Robust Aerial Autonomy(拡張型・高耐性空中自律飛行)

NASAの火星探査計画が過去1年間に支援した25の先端技術プロジェクトのひとつで、将来の探査機がより厳しい環境でも自律飛行できるようにすることを目的としています。

試験場所に選ばれたデスバレーの砂丘は、起伏が少なく、視覚的な目印がほとんどありません。これは、かつて火星で運用されていた**火星ヘリコプター「インジェニュイティ」**が苦戦した状況とよく似ています。


インジェニュイティが直面した限界

インジェニュイティは、地表の特徴をカメラで捉え、それをもとに自身の動きを推定する仕組みで飛行していました。しかし、以下のような問題に直面しました。

  • 砂丘がなだらかで模様が少ない
  • 視覚的な特徴が乏しく、位置推定が難しい
  • 特に終盤の飛行(第72飛行を含む)で航法性能に影響が出た

JPLの研究者でありドローン操縦士でもあるローランド・ブロッカーズ氏は次のように説明しています。

「インジェニュイティは、地表の特徴がはっきりした場所を飛ぶように設計されていました。しかし、模様の少ない場所を越える必要が出てきたとき、自己位置の推定が難しくなったのです。将来の機体では、こうした砂丘の上も気にせず飛べるようにしたいのです」


モハーベ砂漠・デュモント砂丘での追加試験

(NASA画像)

3日間のフィールドワークの後半、チームはさらにモハーベ砂漠のデュモント砂丘へ移動しました。この場所は、2012年に火星探査車「キュリオシティ」の移動システム試験でも使用された実績があります。

デュモント砂丘には、

  • さざ波状の砂丘
  • 完全に平坦ではない地形
  • わずかな凹凸による視覚的変化

といった特徴があり、デスバレーの砂丘とは異なる条件でソフトウェアを検証できます。

地質学者で、過去にインジェニュイティの運用にも関わったネイサン・ウィリアムズ氏はこう語っています。

「現地試験は、コンピュータモデルや衛星画像だけでは得られない多くの気づきを与えてくれます。科学的に価値のある場所ほど、走行や飛行が簡単でないことが多い。だからこそ、インジェニュイティよりもさらに困難な地形にも対応できる準備が必要なのです」


火星で活躍を目指す「ロボット犬」

(NASA画像)

2025年8月には、別のチームがニューメキシコ州ホワイトサンズ国立公園で新たな試験を行いました。この地でも、NASAは何十年にもわたって火星関連の試験を行ってきました。

ここで登場したのが、犬のような外見を持つロボット
**LASSIE‑M(Legged Autonomous Surface Science In Analogue Environments for Mars)**です。

LASSIE‑Mの特徴

  • 脚部のモーターが地面の硬さや状態を測定
  • 砂が柔らかい、崩れやすい、表面が固いなどの違いを感知
  • データをもとに歩行パターンを自動調整

これにより、ローバーでは危険な

  • 岩だらけの斜面
  • 深い砂地

といった場所を先行して調査する役割が期待されています。将来的には、人間や他のロボットの前を進み、科学的に重要な地点を見つけ出す「斥候」となることを目指しています。


翼で火星を飛ぶ新構想「MERF」

(NASA画像)

もうひとつ注目されているのが、**火星電動再使用型フライヤー(MERF:Mars Electric Reusable Flyer)**です。この機体は、インジェニュイティとはまったく異なる発想で設計されています。

MERFの設計コンセプト

  • 胴体と尾翼を省略
  • 単一の翼と2基のプロペラ
  • 垂直離着陸とホバリングが可能
  • 高速で広範囲を飛行

この構造により、火星の薄い大気でも効率よく飛ぶことができます。

実際のフルサイズ機は、

  • 全長は小型のスクールバス程度
  • 折りたたんだ状態で輸送
  • 展開後に飛行

という想定です。

NASAラングレー研究センター(バージニア州)では、半分のサイズの試作機を使い、以下の点を重点的に調べています。

  • 空力特性
  • 超軽量素材の耐久性
  • 火星環境を想定した制御性能

飛行中は、機体下面に搭載された観測機器で地表をマッピングすることも可能です。


火星探査の次の一歩へ

ここで紹介したプロジェクト以外にも、NASAの火星探査計画では、

  • 新しい発電方式
  • 掘削やサンプル採取装置
  • 高度な自律型ソフトウェア

など、さまざまな技術開発が進められています。

地球の過酷な砂漠で行われているこれらの試験は、すべて将来の火星探査につながっています。次の世代のロボットが、より遠く、より安全に、より自由に火星を調べられる日も、そう遠くないかもしれません。

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