【宇宙の果てへ】ボイジャー1号、ついに「地球から1光日」の領域へ

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【宇宙の果てへ】孤独な旅人ボイジャー1号、ついに「地球から1光日」の領域へ。半世紀にわたる奇跡の軌跡と、私たちへのラストメッセージ

目次

はじめに:2026年11月、歴史的なマイルストーンへ

人類がこれまでに作り出した物体の中で、最も遠い場所にいる「孤独な旅人」。米航空宇宙局(NASA)の無人探査機「ボイジャー1号」が、まもなく私たち人類にとって想像を絶する新たな領域に足を踏み入れようとしています。

2026年11月、ボイジャー1号は地球からの距離が「1光日(One Light-Day)」に到達します。

「1光日」。それは単なる距離の数字ではありません。光の速さ(秒速約30万キロメートル)でさえ、到達するのに丸一日かかるという、途方もない隔たりを意味します。このブログでは、半世紀近くにわたり暗黒の宇宙を突き進んできたボイジャー1号の「現在」と、1977年の旅立ちから続く壮大な「歴史」を、最新の情報を交えて徹底的に解説します。


第1章:「1光日」という距離の意味

往復48時間のコミュニケーション

「1光日」とは、具体的にどれほどの距離なのでしょうか。

NASAジェット推進研究所(JPL)でボイジャー計画のプロジェクトマネジャーを務めるスージー・ドッド氏の説明によれば、1光日は距離にして約260億キロメートルに相当します。

この距離がもたらす最大の壁は「通信の遅延」です。

現在でもボイジャー1号との通信には時間がかかりますが、1光日の距離を超えると、地球から光速で指令を送っても、探査機に届くまでに丸24時間かかります。そして、探査機がその指令を受け取り、応答データを地球に送り返してくるまでに、さらに24時間かかります。

つまり、私たちが「おはよう、ボイジャー」と月曜日の朝8時に呼びかけたとしても、ボイジャーからの「おはよう」という返事が届くのは、水曜日の朝8時頃になるのです。

まさに、宇宙という広大な海を隔てた、気の遠くなるような文通です。

現在のボイジャー1号の位置

1977年に打ち上げられたボイジャー1号は、現在、地球から約254億キロメートル離れた場所を航行しています。これは、冥王星の軌道よりもはるか外側、太陽圏(ヘリオスフィア)を飛び出し、恒星間空間(インターステラー・スペース)と呼ばれる領域です。


画像 wikipedia

第2章:1977年、旅立ちの時

グランドツアーへの挑戦

ボイジャー計画は、惑星の配置が176年に一度という稀な「グランドツアー」の機会を利用して計画されました。この配置を利用することで、探査機は木星、土星、天王星、海王星を「スイングバイ(重力を利用した加速)」しながら、一筆書きのように巡ることが可能になったのです。

1977年9月5日、ボイジャー1号はフロリダ州ケネディ宇宙センターから打ち上げられました。

実は、双子の兄弟である「ボイジャー2号」の方が先に打ち上げられていますが、1号はより速い軌道で飛行し、先に木星と土星に到達するように設定されていました。

それぞれの進路

ボイジャー1号と2号は、途中から異なる運命を辿ることになります。

ボイジャー1号は、木星と土星の探査を終えた後、1980年11月に土星をフライバイ(接近通過)しました8。この際、土星の衛星タイタンへの接近を優先したため、惑星の公転軌道面から「上方(北側)」へと大きく弾き出される軌道を取りました。

一方、ボイジャー2号は1989年に海王星を通過した後、軌道面の「下方(南側)」へと進路を取りました。

あの日以来、両機は一度も進路変更を行わず、ただひたすらに慣性飛行で深宇宙へと進み続けています。現在のボイジャー1号の速度は、時速約6万1000キロメートルにも達し、今も地球から遠ざかり続けています。


第3章:老兵の苦闘と「不死身」の設計

ダイヤルアップ並みの通信速度

打ち上げから約50年。ボイジャー1号は満身創痍の状態です。

現在、地球に送信されているデータの速度は、わずか毎秒160ビット。これは、インターネット初期のダイヤルアップ接続よりもはるかに遅い速度です。

ドッド氏は、地球からの距離が極めて遠いため信号が減衰してしまうこと、そしてそれを受信するためには複数の巨大なアンテナアレイが必要になることを説明しています。この低速通信のため、探査機の健康状態を把握するデータ(テレメトリ)の情報量は限られ、何かトラブルが起きても、即座に原因を究明し対応することが極めて困難になっています。

命を削る延命措置

ボイジャーの動力源である原子力電池(RTG)の出力は、年々低下しています。運用チームは、探査機の寿命を少しでも延ばすため、断腸の思いで難しい決断を重ねてきました。

電力を節約するために、科学観測機器のヒーター(保温装置)を次々とオフにし、極寒の宇宙空間で機器が凍結しないギリギリの温度管理を行っています。

特に重要なのが「姿勢制御」です。通信を維持するためには、ボイジャーのアンテナが常に地球を向いていなければなりません。もし推進剤の配管が凍結し、姿勢制御スラスターが機能しなくなれば、アンテナの向きが変わり、地球との通信は永遠に途絶えてしまいます。それはすなわち、ミッションの失敗(終了)を意味します。

世代を超えるチームの絆

ボイジャー1号を支えているのは、探査機自身の堅牢な設計だけではありません。それを支える地上の運用チームの存在があります。

現在のボイジャーチームは、まさに「多世代」の混合チームです。特定のサブシステムについて助言を行う80代のNASA退職者(レジェンドたち)と、ボイジャーが打ち上げられた時にはまだ両親さえ生まれていなかったような若いエンジニアたちが協力し合っています。

ドッド氏は、「ボイジャーにおけるこのような世代を超えた努力は、本当にやりがいを感じる」と語り、探査機を地球からの「アンバサダー(大使)」と呼んで敬意を表しています。


第4章:未来への展望と2027年の節目

打ち上げ50周年を目指して

ボイジャーチームの現在の最大の目標は、2027年に迎える「打ち上げ50周年」まで探査機を稼働させ続けることです。

ドッド氏は、少なくともボイジャー1号か2号のどちらか一方は、今後2〜5年は航行を続けられると予測しています。

しかし、その道のりは決して平坦ではありません。

2027年までには、さらに多くの装置やシステムを停止する必要が出てくるでしょう。チームは、星間空間の環境を測定するための「磁力計」と「プラズマ波サブシステム」を、最後まで稼働させたいと考えています。これらの機器が動いている限り、ボイジャーは未知の星間空間における「気象衛星」のような役割を果たし、貴重なデータを送り続けることができるからです。

ボイジャー2号の未来

ちなみに、双子のボイジャー2号が「1光日」の距離に到達するのは、計算上2035年11月になると予測されています。しかし、最も楽観的な予測をもってしても、その時点でボイジャー2号がまだ稼働している(通信可能な状態である)可能性は低いとされています。

それでも、ボイジャー兄弟はこれまで何度も私たちの予想を覆し、奇跡的な復活を遂げてきました。彼らの生命力には、科学的な予測を超えた何かがあるのかもしれません。


第5章:永遠の旅路へ

ボイジャー1号には、地球の音や画像、55の言語による挨拶を収めた「ゴールデンレコード」が搭載されています。

いつか、探査機の機能がすべて停止し、地球との通信が途絶えたとしても、ボイジャー1号は慣性の法則に従い、銀河系の中を永遠に飛び続けます。

CNNの記事によれば、ボイジャー1号は現在、地球から約254億キロ離れた星間空間にあり、人類が送り出した物体として最も遠い場所に位置しています。

あと2年足らずで到達する「1光日」という距離。それは、私たち人類が物理的に到達したことのない領域であり、同時に、私たちの文明が存在した証が、光の速さですら丸一日かかるほど遠くまで届いたという証明でもあります。

スージー・ドッド氏が「私はこれらの宇宙船が大好きだ」と語るように、ボイジャーは単なる機械の塊ではなく、私たちの夢と好奇心を乗せた、愛すべき「人類の大使」なのです。

2026年11月。ボイジャー1号が1光日のラインを超えるその日、私たちは夜空を見上げて、24時間前の彼らに「おはよう」と心の中でつぶやくことになるでしょう。その声が届くのは翌日ですが、私たちの想いはきっと、光の速さを超えて繋がっているはずです。


まとめ:ボイジャー1号の主要データ

(※本記事のデータは2026年1月時点の情報に基づきます)

  • 打ち上げ: 1977年9月5日
  • 現在の位置: 地球から約254億キロメートル(星間空間)
  • 現在の速度: 時速約6万1000キロメートル
  • 「1光日」到達予定: 2026年11月
  • 1光日の距離: 約260億キロメートル
  • 通信遅延(1光日到達時): 片道24時間、往復48時間
  • 通信速度: 毎秒160ビット
  • 次の目標: 2027年の打ち上げ50周年

最後に

この記事を書いている今も、ボイジャー1号は漆黒の闇の中を突き進んでいます。50年前の技術で作られた彼らが、今なお現役でデータを送り続けている事実に、ただただ畏敬の念を抱きます。スマートフォンの買い替えサイクルが数年の現代において、半世紀前の技術が宇宙の最前線で戦っている。この事実は、私たちに「物作り」の真髄と、未知へ挑戦する勇気を教えてくれているような気がします。

皆さんは、来年の11月、どこで何をしているでしょうか?

その時、はるか260億キロの彼方に思いを馳せてみてください。

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