
打ち上げまであと60日!JAXAの火星衛星探査計画「MMX」が10月20日発進へ
日本が世界をリードする深宇宙サンプルリターン探査に、新たな金字塔が打ち立てられようとしています。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2026年8月20日、火星衛星探査計画「MMX(Martian Moons eXploration)」の探査機を搭載した大型ロケット「H3」10号機(H3・F10)の打ち上げ日時を正式に発表しました。
打ち上げ日時は2026年10月20日午前4時41分03秒(日本標準時)、種子島宇宙センターの大型ロケット発射場からの打ち上げが予定されており、打ち上げ本番まで残りちょうど60日とカウントダウンが始まりました。
MMXは、小惑星探査機「はやぶさ」「はやぶさ2」で培われた世界最高峰の往還・探査技術をさらに発展させ、火星圏という遠大な重力場へ挑む人類史上初のプロジェクトです。
探査機は打ち上げ後、約1年の歳月をかけて火星圏へと航行し、2027年夏に火星周回軌道へと投入される計画となっています。
その後、約3年間にわたって火星の第1衛星「フォボス」に寄り添う疑似周回軌道(QSO)を維持しながら、超高解像度カメラや分光計を駆使した極めて詳細なリモートセンシング観測を実施します。
このミッションの究極の目標は、火星圏から物質を採取して地球へと帰還するサンプルリターンです。
探査機はフォボス地表への着陸を行い、地表から深さ2センチメートルまでのレゴリス(砂礫)を少なくとも10グラム以上採取することを目指しています。
さらに第2衛星「ディモス」への接近観測も行い、2031年にカプセルをオーストラリアの砂漠地帯へ無事帰還させる壮大な航海が幕を開けようとしています。
フォボス着陸探査とローバー「IDEFIX」が解き明かす太陽系形成の起源

MMXの科学的探査において最大の焦点となっているのが、火星の衛星がどのようにして誕生したのかという未解明の謎です。
天文学界では長年、かつて巨大な天体が火星に衝突して飛び散った破片から生まれたとする「巨大衝突(ジャイアント・インパクト)説」と、小惑星帯から飛来した小天体が火星の重力に捕らえられたとする「捕獲説」の2大仮説が激しく対立してきました。
フォボスの土壌サンプルを地球の最先端分析機器で調べることで、水や有機物が太陽系の内側へどのように運ばれ、生命を育む惑星環境が整ったのかを解き明かす決定的な証拠が得られます。
探査機の着陸に先立ち、微小重力環境下で重要な地表探査を担うのが、フランス国立宇宙研究センター(CNES)とドイツ航空宇宙センター(DLR)が共同開発した小型ローバー「イデフィックス(IDEFIX)」です。
探査機本体から投下されたイデフィックスは、わずかな重力の中でバウンドしながら自立姿勢を確立し、約100日間にわたってフォボス地表を車輪で走行しながら車輪の沈み込み具合や土壌の物理特性を計測します。
この先行探査によって得られた地表データは、MMX母船が安全に着陸し、確実なサンプリングを実施するための重要な指標となります。
さらにNASAが提供するガンマ線・中性子分光器「MEGANE」や、8K超高精細カメラなど、国際協力による多彩な観測機器が惜しみなく投入されています。
火星圏への往還技術の獲得は、将来の国際有人火星探査においてフォボスを天然の有人中継基地として活用するための基盤技術としても期待されています。
人類のフロンティアを切り拓く日本の挑戦は、まさに宇宙科学の新時代を告げるものとなります。