【はやぶさ 第2章】絶望からの生還と執念の運用

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【はやぶさ 第2章】絶望からの生還と執念の運用

通信途絶から約7週間後の2006年1月、奇跡的に微弱な電波が地球に届きました。
「1ビット通信」と呼ばれる最低限の信号により、探査機は姿勢制御用の化学燃料をすべて喪失し、バッテリーも過放電で機能停止、さらに太陽電池パネルが太陽の方向を向いていないため電力も枯渇寸前という、まさに満身創痍の状態であることが判明しました。
管制チームは、イオンエンジンの中和器からキセノンガスを直接噴射するという想定外の方法でわずかな推力を生み出し、太陽光の放射圧を利用して機体の姿勢をゆっくりと立て直すという離れ業をやってのけます。
気の遠くなるような時間をかけ、太陽電池からの電力供給を回復させたチームの執念は、はやぶさを再び地球への帰還軌道へと乗せる道を開いたのです。

クロス運用という奇策と満身創痍の旅路

帰還への旅路も決して平坦ではありませんでした。
姿勢制御を担うリアクションホイールは1基しか残っておらず、主推進機であるイオンエンジンも宇宙線の影響や長年の稼働による劣化で次々とトラブルに見舞われます。
2009年11月には、稼働していた最後の1基のイオンエンジンが停止し、万事休すかと思われました。
ここでチームは、エンジンの「イオン源」と別系統の「中和器」をバイパス回路でつないで一つのエンジンとして稼働させる「クロス運用」という奇策を実行します。
あらかじめ組み込まれていた冗長回路を最大限に活用したこの機転により、はやぶさは再び推進力を取り戻しました。
傷ついた体を文字通り騙し騙ししながら、はやぶさはひたすらに地球を目指して深宇宙を飛び続けたのです。

美しき大気圏再突入とカプセルの回収

Image Wikipedia

2010年6月13日、7年間、約60億キロメートルに及ぶ過酷な旅路の果てに、はやぶさはついに地球へと帰還しました。
カプセルを分離した後、最後の大仕事としてカメラを地球に向け、自らの故郷の姿を撮影してデータを送信しました。
その後、はやぶさ本体は大気圏に秒速約12キロメートルという猛スピードで再突入し、オーストラリアの夜空に流星のように輝きながら燃え尽きました。
一方、熱を遮断するヒートシールドに守られた再突入カプセルは無事にパラシュートを開き、ウーメラ砂漠へと着陸しました。
月以外の天体の固体表面に着陸し、地球に帰還するという史上初の快挙が、この瞬間に達成されたのです。

イトカワの微粒子が語る太陽系の秘密

回収されたカプセルは厳重な管理のもと日本へと輸送され、クリーンルーム内で慎重な開封作業が行われました。
当初は何も入っていないのではないかという不安もありましたが、特殊なヘラを使った採取などにより、顕微鏡サイズながら多数の微粒子が確認されました。
SPring-8など世界最高峰の施設による初期分析の結果、これらの微粒子は間違いなく小惑星イトカワ由来のものであり、普通コンドライト隕石と類似した組成を持つことが証明されました。
これにより、地球に飛来する隕石の故郷が小惑星であることが直接的な証拠として結び付けられ、太陽系初期の物質進化の過程を解明するための極めて貴重なデータがもたらされたのです。

まとめ

満身創痍になりながらも、決して諦めない技術者たちの創意工夫によって地球へ戻ってきたはやぶさの旅は、まさに奇跡と呼ぶにふさわしいものでした。
持ち帰られた微小な砂粒は、今も私たちの宇宙への理解を深めるために世界中で研究され続けていますね。

はやぶさ2へ続く

参照リンク:
宇宙航空研究開発機構(JAXA)

ORION FIELD
・宇宙科学系ライター ・スペーステックライター
宇宙情報を発信しているオリオンフィールドです。
このブログはNASAの公開データをベースに宇宙の情報を発信しています。

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